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社会の中の人工物工学研究部門 – Socio-Artifactology Division

Socio-Artifactology

人工物は、多様な価値を持つ人々が形成する社会の中で、その価値を発現します。本研究部門では、そのように、人工物が社会の中で共創的に価値を創成するプロセスについて研究を行います。そのために、価値ある人工物を社会の中で創造する、人工物の社会技術化の方法論を構築します。また、社会の中で価値創造を行うために、多様な人々による共創的な意思決定の方法についても研究を進めていきます。

宇宙技術が拓く人間 − 地球系科学の新たな共創(六川教授)

宇宙からの地球観測技術では、これまでの光学およびレーダによる画像型のデータ取得技術に加え、レーダの位相情報からミリメートル精度で微細な地形・建造物の変動を検知できる干渉型SARが開発されてきました。この種の技術は、1)地震や自然災害の発生につながるタイムリーな事前状況の提供、2)レーダの遅延情報による新たな大気科学の進展、3)世界のエネルギー・水資源の適切な管理情報の提供、4)ダム等基幹インフラのメンテナンス戦略への貢献、など人間の地球とのかかわり合いに新たな基軸を提示しています。本研究では、これらの基礎となる干渉SARの基盤処理ならびに実用処理技術の開発を進めています。具体的には九州地方をケーススタディとして、地滑り、地盤沈下、火山監視ならびに河川流域の総合モニタリングの事例研究を積み重ねています。

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左)干渉SARによる九州地域の累積変動図(2006-2010)

右)宮崎県鰐塚山の事例


構造材料劣化予測手法と新しい検査技術の融合に関する研究(沖田准教授)

巨大で複雑な人工物の安全・安心な運用のためには、人工物最適設計技術と共に、安全のキーとなる構造材料を対象として、経年と共に発生する劣化を予測する技術、予測に基づいて適切な時期・箇所を選定し劣化具合を検査する技術、破損箇所を補修する技術の開発が求められます。計算科学による構造材料劣化予測モデル開発、材料内部のミクロな変化を検出しうる非破壊検査技術の開発を通じて、社会から信頼される人工物のあり方について検討しております。これらを統合し、メンテナンス手法に関する研究、最新技術の迅速な適用のための手法構築への展開を図り、人工物のライフサイクルを包含して、運用の効率化と安全性の向上に貢献します。

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左)非破壊検査によるミクロ組織検出手法の開発

右)分子シミュレーションによる材料劣化予測モデル構築


成熟社会の先端シミュレーション技術(山田准教授)

現在の社会は大量生産・消費による成長期を経て、心の豊かさを重視する成熟期を迎えています。この成熟社会の基盤となっているのは、主に高度経済成長期に効率を重視して建造された重要構造物です。成熟社会に生きる我々は重要構造物をより安全・安心に利用していくとともに、これらの重要構造物が支える交通網や情報網といった高度に発展したネットワークの健全性も評価していく必要があります。このため世界最高水準スーパーコンピュータ「京」などの先端計算資源と高度なシミュレーション技術を用いて成熟社会の防災・減災へ資する研究開発を行っています。特に重要構造物の機能喪失がネットワークに与える動的な影響などをシミュレーションにより予測し、災害に強い成熟社会の提案を目指します。

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左)スーパーコンピュータ「京」

右)交通ネットワーク


持続可能な地圏利用のための地盤変形モデリングとモニタリング技術の統合(愛知特任助教)

地下からの資源採取や地下への廃棄物処分は、人間の産業活動の基礎をなし、人類に多大な恩恵をもたらすとともに、環境に悪影響を与えうるものでもあります。環境影響を最小限にしつつ持続的に恩恵を得られるような地圏利用のための技術と、メリットとリスクを公平に踏まえた意志決定の仕組みが必要です。地下の流体挙動とそれにともなう地盤変形を予測するモデリング技術と、広域的な地盤変形モニタリング技術を統合することによって、人間活動に伴う地下の変化をより精度良く評価する技術の開発を行っています。また、そういった先進的な技術によって得られた情報に基づく、事業管理計画の策定や、地域社会との合意形成に向けた共創的な仕組みのあり方について研究しています。

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左)地盤変形抽出のためのInSAR画像処理手法の数値シミュレーションによる検証

右)地盤変形に対するモデリング技術・モニタリング技術と統合した共創的地圏開発スキーム


人工物シミュレータの実現を目指して
~組織における知識伝播過程のマルチエージェントシミュレーション~(奥田教授 兼務)

ものづくり産業の現場で生産性・品質を持続的に向上させるためには、組織内で知識を伝播させることによって、知識を共有・創造する必要があります。本研究では、野中らのSECIモデルに基づいた知識伝播過程のエージェントモデルを提案します。このモデルでは、知識の複雑さをビットタグによって表現し、労働者 (ものづくり産業の現場における操業者) エージェントとナレッジマネージャーエージェントを導入します。本モデルを検証するため、労働者エージェントが有するビットタグ長さ、内面化率、コミュニケーションパターンに対するパラメータスタディを実施し、組織内の知識の獲得を評価します。さらに、労働者エージェントの雇用期間に関してシナリオシミュレーションを実施し、労働者の流入出に応じた知識の変化を定性的に評価します。(本研究は、新日鉄住金株式会社(旧、新日本製鐵株式會社)と東京大学人工物工学研究センターとの共同研究「鉄鋼プロセスにおける知のマネジメントと価値創成(平成21~24年度)」の成果の一部です。)

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左)知識伝播過程のマルチエージェントシミュレーション

右)労働者エージェントの平均共有ビット率の時刻歴


経済実験を用いた社会における人工物の価値構成メカニズムの研究(西野准教授 兼務)

人工物が社会でどのように価値を生み出すかという問題に対して、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。人工物、人、環境の関係性がますます複雑化する現在、それらの相互作用を通じて、人工物がどのように社会で価値を生み出すかを科学的に理解することが、人工物設計の理論構築において重要な位置を占めます。本研究では、実験室に仮想社会を構築し、実際の人間を被験者として参加させ、どのような社会が形成され、そこでどのように価値が構成されるかを観察します。換言すれば、実験経済学の手法を基にした統制実験環境に人工物設計の視点を取り入れ、構成論的アプローチによってそのメカニズムを解明するということです。現在、具体的事例として、自動車生産におけるモジュール化技術の価値創成メカニズムの研究や、プラットフォーム型プロダクトサービスシステムにおけるビジネスモデルを対象にしたテーマで研究を進めています。

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左)経済実験室の様子

右)プラットフォームタイプ製品サービスシステムの基本モデル

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